2011年2月9日水曜日

満月 舟橋聖一

1947

書 名 満月
著 者 舟橋聖一
発行人 久保藤吉 
発行日 昭和22年9月25日初版 昭和23年11月30日再版
発 行 大元社
発行所 東京都中野区江古田1−2302
印刷人 久保宇之助
製本人 久保長吉
判 型 B6判 上製平綴じ カバー付 本文278ページ
定 価 120円(再版時)


満月 目次

【ひとこと】舟橋聖一は戦後、菊池寛をたすけて文藝家協会の再興にのりだし、初代理事長をつとめた。いまはなき大元社は、舟橋が理事長時代、日本文藝家協会編『現代小説代表作選集』3巻や『文藝手帖』をだした出版社である。
このころの花森安治は、装釘家として活躍の場をもとめ、協会にかかわろうとしていたのではないか。花森は舟橋の3作品を装釘し、機関誌『文學会議』(講談社刊)の表紙絵もかいている。ちなみに当時の協会理事には、中野重治、井上友一郎、石川達三らが名をつらねており、かれらの作品も花森は装釘した。


見返し 前後同一デザイン
奥付
満月 ウラ表紙

【もうひとこと】『満月』は昭和24年、監督田中重雄で映画化された。朴訥な百姓男(藤田進)の、奔放な芸者(花柳小菊)にかけた、いちずな愛がテーマである。通俗的ではあるが、舟橋のペンは、当時の農村の暮しと、都市の社会世相をうつしており、男と女のつきなみな愛欲ものに堕してはいない。
しかるになぜか、本書には志村立美がかいたカバーがかけられた。初版からかけたかどうかわからぬが、上品な絵とは、いいがたい。売らんがためであったならば、いかにもあざとい。著者の舟橋聖一はもとより、絵をかかされた志村立美も、いまごろ泉下で、忸怩たる思いをしているのではないか。以上、小生のモノの見方である。


花森安治の表紙

志村立美のカバー