2018年1月27日土曜日

『花森安治装釘集成』W受賞

花森安治装釘集成 2016

書 名 花森安治装釘集成
著 者 花森安治(1911ー1978)
編 者 唐澤平吉 南陀楼綾繁 林哲夫
写 真 河津一哉
装 釘 林哲夫(レイアウト)
発行日 平成28年11月25日(奥付は3日、文化の日)
発 行 みずのわ出版
発行者 柳原一德(写真・校閲)
発行所 山口県周防大島町西安下庄 庄北2845
印 刷 山田写真製版所
製 本 渋谷文泉閣  
判 型 B5判 PUR製本 288ページ
定 価 8000円+税



第51回造本装幀コンクール(2017)
●主催 (社)日本出版協会・(社)日本印刷産業連合会 
◎日本書籍出版協会理事長賞 受賞

受賞作品目録




第59回全国カタログ展(2018)
●主催 (社)日本印刷産業連合会
◎審査員特別賞(松永真賞)・図録部門 銀賞


受賞作品目録



 【ひとこと】
おもいがけず賞を二ついただきました。どちらも出版・デザイン・印刷業界で半世紀以上の歴史をもつ名誉ある賞です。たいへん光栄でありがたく、編者の一人としてよろこびをかみしめています。とはいえ、地方の一人出版社の刊行物で、宣伝販売がゆきとどかず、版元は苦労しています。本好きの方のみならず、出版編集およびブックデザイン関係者の方にお求めいただければ、なによりです。

2017年1月14日土曜日

花森安治装釘集成 

表紙とオビ
じっさいの表紙は白色で文字が白箔押し(凹)


書 名 花森安治装釘集成
著 者 花森安治(1911ー1978)
編 者 唐澤平吉 南陀楼綾繁 林哲夫
写 真 河津一哉
協 力 暮しの手帖社
装 釘 林哲夫(レイアウト)
発行日 平成28年11月25日(奥付は3日、文化の日)
発 行 みずのわ出版
発行者 柳原一德(写真・校閲)
発行所 山口県周防大島町西安下庄 庄北2845
印 刷 山田写真製版所
製 本 渋谷文泉閣  
判 型 B5判 並製 288ページ
定 価 8000円+税


10月25日は、花森安治の誕生日、ことしは生誕105年でした。
ふしめの日に、刊行できなかったのは残念ですが、それでも小生にとって長年の夢がかない、ほんとうにうれしくおもっています。ついに日の目を見ることになりました。

このむつかしい時世に、男気で出版をひきうけてくれた版元の柳原さんをはじめ、装本レイアウトに丹精をこらしてくれた林哲夫さん、正鵠を射た解説によって本書の格調をあげてくれた南陀楼綾繁さん、そのほかに暮しの手帖社ゆかりの河津一哉さん、平賀美乃里さん、いまはなき宮岸毅さん、横佩道彦さん、中川顯さん、そして島根大学図書館、世田谷美術館など、多くの方々の協力を得て、ようやくでき上がりました。こころから感謝しています。

本書に収載したタイトルは500点を超え カラー図版は約1,000点にのぼります。花森安治が手がけた、松江高校時代にはじまる戦前戦中戦後の装釘のしごとを、ほぼ網羅しています。装釘家であり、イラストレーターでもあった花森安治。この一冊で、その生涯にわたる活躍ぶりを、見わたしていただける内容になったと自負しています。これが実現できたのも、出版を許諾してくださった土井藍生さんのおかげです。ありがとうございました。お伺いすべきところですが、信州伊那谷から、あつくお礼申し上げます。

本書では、拙ブログ「花森安治の装釘世界」で公開をせずにとっておいた、希少の珍しい花森作品を数多くごらんいただくことができます。惜しむらくは古書のために、刊行当時の色調が褪せていたり変色したりしていることですが、それでも花森安治ならではの自由な画法、かき文字の力強さといったもの、なにより一作ごとに斬新であろうとした職人かたぎの創作姿勢が、どのページからもつぶさに伝わり、ひたむきな情熱を感じとっていただけるでしょう。とくにデザインを志す若い方々にごらんいただきたくおもいます。



チラシ

【ご購入方法】
本書は少部数の限定出版のため、一般書店でのご購入はちょっとむつかしく、みずのわ出版まで直接ご注文いただくのがもっとも確実です。

電話・ファクシミリ 0820−77−1739
メールアドレス mizunowa@osk2.3web.ne.jp

■注文部数・お名前・ご住所・電話番号をお知らせください。
■本が郵便振替用紙同梱で送られます(送料無料)。
■到着から10日以内を目処にご送金ください。恐れ入りますが、郵便局への御足労と、振替手数料はご負担願います(窓口よりも、ATMを使ったほうが手数料が安く上がります。ただし月3回まで)。

■銀行振込をご希望の場合、別途見積書、領収書等が必要な場合は、その旨お知らせください。
・代引サービスは取り扱っていません。あしからずご了承ください。


【制作の舞台裏から】
本書制作は、林さんに相談したのが発端です。みずのわ出版は、先に林さんの装本レイアウトで『佐野繁次郎装幀集成』を刊行し、広く好評を得ていました。おなじようなスタイルで、花森本も一冊にまとめられたらと願いました。それが六年前のことです。

ところが、ことは容易ではありませんでした。制作にかかわる四人の地理的特異性です。みずのわ出版は山口県周防大島、林さんは京都、南陀楼(河上)さんは東京、そして小生は信州伊那谷で暮しています。モノを持ち寄って、ちょっと打ちあわせ、というわけにはまいりません。

また、いざ始まると、持ち前の<欲>が出てきました。もっと良くしたいという、モノ作りの現場で生まれてくる際限のない欲です。できるかぎり多く書影をのせたい、その思いが強いあまり、追加蒐集に手間どり、そのうえ花森安治の特色が見てとれるレイアウトにしてほしいと註文をつけて、目次や本文文字組、奥付など、可能な限り見てとれるようにと、せっかくできていた林さんのレイアウトをやりなおしてもらうという、まことに失礼なわがままを通しました。刊行までにかくも長い歳月を要したその責は、ひとえに小生にありますが、その甲斐があったとよろこんでいます。

本書の制作をとおして、プロのしごとを再認識しました。それは『書影の森』の著者、臼田捷治さんも感心しておられましたが、装本レイアウトの林さんのセンスのよさと共に、ひとり出版社を主宰する柳原さんの責任感のつよさ、お二人のまじめで綿密なしごとぶりです。柳原さんは周防と信州、周防と松江、そして周防と京都をいくども往復し、泊まりこみで撮影、書誌データの蒐集、校正にあたってくれました。いかにコンピューター時代でも、やはり要所はひとの手しごとであること、良いしごとは手間ひまがかかること、そのことをお二人は妥協せずに見せてくれました。

南陀楼綾繁さんは、<縁>というキーワードによって、花森の装釘のしごとを解説してくれました。本書もまた、花森安治を敬愛する人々の縁が結ばれて、できあがりました。人の世の不思議をおもい、感慨無量です。出版界の将来に、小さいながらも一つ、希望の灯をともし、人々のこころに、天才アルチザンのいのちが吹きこまれることを、願ってやみません。

そしてここに感謝したいのが、山田写真製版所で印刷を担当してくれたみなさんです。元本に照らし、なんども色校正をだして、印刷に細心の注意と手間をかけてくださいました。編者冥利につきます。ありがとうございました。

書名の文字を白箔押ししただけの白亜の表紙には、花森への敬虔な思いが、花森の絵柄に似せた楽しげなオビには、親愛の情がこめられているようで、やさしい気持に包まれます。専門書に類するため、大部数刊行がためらわれ、そのため一冊単価は高くなってしまいましたが、手にとっていただき、扉を開いてごらんいただけば、花森安治の豊饒な装釘世界を、どなたもきっとご満喫いただけることでしょう。

どうぞよろしくお願い申し上げます。


【追記】
きょう1月14日は花森安治の祥月命日。
花森がなくなった日の早朝、東京はこぬか雨でした。やがて冷たい風が吹きはじめ、町に冬の寒さがもどると、伊豆大島近海を震源とする、大きな地震が何度かありました。 そのとき暮しの手帖研究室では、なにごともなかったかのように、しごとをしている自分がいました。胸が疼きます。

このブログは、この追記をもって終了しますが、いまなお閲覧してくださる方がいますから、とうぶんは閉じずにおきます。願わくば、花森安治のためにも、なるべくコピペをしないでいただきたく存じます。

長い間、拙ブログにお立ち寄りいただき、ありがとうございました。









2016年11月17日木曜日

花森安治装釘集成 刊行迫る

面付で印刷の上がり具合を確認

みずのわ出版から『花森安治装釘集成』の進行状況について、山田写真製版所での制作現場写真をそえて連絡がありました。担当責任者から「濃度の濃いところのインク負けしないよう、やや圧かけて刷りました。ドライダウンに負けずしっかり乗っていると思います。予想通りの沈み具合です」と伝えられたそうです。一つ一つていねいな仕事ぶりが写真からわかります。もう刊行は目前です。

オビの色味具合

見本の表紙の上がり具合(書名は箔押し)

さっそく見本が作られたようです。白いシックな表紙と色あざやかなオビが、花森安治の装釘世界へ、ここちよく誘います。出来上がりが、ほんとうに待ち遠しい。

見本誌を開くとこんな感じ


「心躍りする本」になっていると、手前味噌ながら、言い切れます。この本には、みずのわ出版柳原さんと、山田写真製版所の現場担当者の、ぶざまな仕事だけはしたくないという、<職人魂>がこもっています。

早く手にとって、実物を目にしたいですね。

みずのわ出版では引続きご予約受付中です!
 花森安治装釘集成
唐澤平吉・南陀楼綾繁・林哲夫 編
2016年11月25-26日頃出来
B5判並製282頁 収録タイトル500点超 カラー図版約1,000点
税込定価 8,640円(本体8,000円+税640円)
ISBN978-4-86426-033-6 C0071
みずのわ出版
〒742-2806 山口県大島郡周防大島町西安下庄、庄北2845
Tel/Fax 0820-77-1739 mizunowa@osk2.3web.ne.jp

【版元柳原さんのメッセージ】
・高いめの価格設定ですが、ものを手にすれば納得していただけるものと確信しております。「書影の森―筑摩書房の装幀1940-2014」(2015年5 月刊、税込10,800円)よりも買いやすい価格にという要望もあり、また「書影の森」と比較して多少でも実売部数増が見込めることもあり、可能なところ まで価格を下げることにしました。加えて、今回はネット販売の予約とりを扱っていただける書店さんもあり(定価です)、予約特価は設定しておりません。ご了承願います。その代わりと云ってはアレですが、何ぞオマケがついてくる……かもしれません。
・注文部数・お名前・ご住所・電話番号をお知らせください。本が出来次第、郵便振替用紙同梱でお送りします(送料無料)。書籍の到着から10日以内を目処 にご送金をお願いします。恐れ入りますが、郵便局への御足労と、振替手数料はご負担願います(窓口よりも、ATMを使ったほうが手数料が安く上がりま す)。
・銀行振込をご希望の場合、別途見積書、領収書等が必要な場合は、その旨お知らせください。
・代引サービスは取り扱っておりません。あしからずご了承ください。
★★★
京都の誠光社さん、ホホホ座さん、古書善行堂さんでも、ご予約受付中です。お買上げ1万円以上で送料無料となります(あと1点、このさい欲しい本とあわせてご注文いただけたら、です)。詳細は以下サイトへ。
誠光社 https://seikosha.stores.jp/items/57f2354c9821cc7c4b001362
ホホホ座 http://gake.shop-pro.jp/?pid=108435036
古書善行堂 http://zenkohdo.shop-pro.jp/?pid=108273799

2016年10月22日土曜日

大下宇陀児 生誕120年特別展

案内リーフレット


小生が暮す長野県箕輪町がうんだ探偵小説作家、大下宇陀児の生誕120年を記念して、町の郷土博物館で、特別展がはじまりました。

大下宇陀児は、江戸川乱歩や横溝正史らと共に日本の推理小説界の発展に大きな貢献をはたした作家でしたが、明智小五郎や金田一耕助のような主人公を設定した作品をのこさなかったため、いつしかその名を忘れ去られてしまった作家の一人です。だから愛妻の名をもじったペンネーム、大下宇陀児を「おおした・うだる」と正確に読める人も、今では少なくなりました。

しかし、大下の「人間派」とも「社会派」とも称された作風を高く評価したのが、じつはミステリ小説をこよなく愛した花森安治でした。花森は『暮しの手帖』に二度にわたって大下の随筆を掲載しており、かつてこのブログで紹介したように、大下の自選作品集『凧』(早川書房・第二版)の装釘もしています。


花森安治装釘『凧』表紙


今回の特別展開催にあたり、町教育委員会の要請があり、小生も上掲の『凧』のほか、大下宇陀児の写真や江戸川乱歩と花森安治の対談を掲載した雑誌『宝石』など、展示に協力しました。すでに終了しましたが、朝ドラ「とと姉ちゃん」のおかげで『暮しの手帖』と花森安治の名まえが記憶に新しいだけに、大下宇陀児と花森安治のとりあわせは、観覧におとずれた人々に、うれしさを伴った驚きをもって迎えられています。


特別展図録・表紙


開催期間は、大下の誕生日11月15日まで。入場無料。毎日午前9時〜午後5時。月曜休館。 郷土博物館は箕輪町役場の近く。信州が生んだ偉大な探偵作家の生涯と業績について、あらためて広く知ってもらう機会になればと、小生もおもいます。




2016年10月15日土曜日

『暮しの手帖』と花森安治の素顔

カバー おもて


書 名 『暮しの手帖』と花森安治の素顔
共著者 河津一哉+北村正之
構 成 小田光雄(インタビュー)
装 釘 宗利淳一
発行日 平成28年10月15日
発 行 論創社
発行者 森下紀夫
発行所 東京都千代田区神田神保町2−32 北井ビル
印 刷 中央精版印刷(組版 フレックスアート)  
判 型 四六判 本文183ページ
定 価 1600円+税


著者の河津一哉さんから早速ちょうだいしました。
《「素顔」といいながら通りいっぺんで、かの「編集室」の生き生きとした描写の足もとにも及びません》
と、一筆箋に添えられた河津さんのことばは、もちろんその謙虚すぎる人柄をあらわすものであって、本書の内容はけっして「通りいっぺん」ではありません。
河津さんは『暮しの手帖』のもっとも古い男子編集部員で、同じ年に入部の宮岸毅さんとともに、花森安治の厚い信頼をえていた大先輩です。河津さんも宮岸さんとおなじで、とても慎み深く、ことばをよく選んで、テーマとなっている花森安治の本質を伝えようとします。だから読んでいると、おやっとおもうところが必ずあります。そこにテーマを解く<鍵>が埋められています。そこを読みすごすと本書は「通りいっぺん」になるとおもいます。たとえば、河津さんのこんなことば(118〜9頁)に、『暮しの手帖』の栄光と挫折がさりげなく浮かび上がります。

《それと『暮しの手帖』はあくまで花森の雑誌だったということですね。例えば、広告を載せないことは花森の信念とエディターシップに由来するものだし、広告ではなく読者がスポンサーになっていることに自信を持っていた。
そうした彼の信念、エディターシップ、自信といったものは大橋鎭子にしても考えが及ばなかったし、我々も同様だった。そうしたことを含め、花森なき後の会社の将来に関して、見通すことは無理でした。》

本書は、出版状況クロニクルやブログ古本夜話で著名な小田光雄さんによるインタビューで構成されています。小田さんは、出版業界の生き字引と称される博識をもって、さまざまな角度から花森安治と『暮しの手帖』に迫ります。それに相対する元編集部員のうけこたえは、小生も端くれとはいえ元部員だったせいか、心情がよくわかり、節度をもって抑制されたふたりの語り口が、とてもさわやかでした。認識をあらたにさせられた一冊です。

朝ドラ「とと姉ちゃん」と共に、鎭子さんをめぐる多くの書籍がでて『暮しの手帖』はいちやく話題になりました。ドラマがおわり、押しよせた波がひこうとするいま、憲法の尊厳が崩されようとしているとき、花森安治の『暮しの手帖』って、いったい何だったのか、それをあらためて知りたいという方に、本書をおすすめします。

澤田編集長にかわってから、編集部と読者のあいだが狭まり、著者と読者のあいだが近づいたように感じています。それは、上から目線で教えようというのではなく、読者と共に暮しを考え、いっしょに良くしていこうという姿勢への変化、の現れではないでしょうか。言いかえれば、それは花森イズムへの回帰であり、「とと姉ちゃん」はそのきっかけを作り、後押しをしてくれたドラマのように思えます。


【幻戯書房の近刊案内に注目!】
津野海太郎著『花森安治伝』であきらかにされた、花森安治の従軍手帖と、銃後の妻子あてに書いた書簡などが、一冊にまとめられ、11月下旬刊行されます。その概要を幻戯書房のサイトからコピペして以下に供します。来月は、花森安治ファンにとって、ひとしお楽しみ多き月になりそうです。
 
・花森安治 著  土井藍生 編
・書名『花森安治の従軍手帖』
・A5判上製 256頁
・予価2500円 

敗戦以前、花森安治が二度の従軍(38年、43年)と大政翼賛会宣伝部時代に書き残した手帖と書簡類を100余点の写真とともに収録。

<構成内容>
1 「従軍手帖」を含む39年~45年の手帖5冊
2 妻子宛に送った40年~44年の書簡・葉書13点
3 既刊未収録エッセイ、卒業論文「社会学的美学の立場から見た衣粧」
4 巻末資料 回想談・土井藍生 
    解説・馬場マコト(『花森安治の青春』著者)