2011年9月21日水曜日

ポエム・ライブラリイ

1955 ポエム・ライブラリイ1 同3
ポエム・ライブラリイ4 同6


書 名 ポエム・ライブラリイ 全6巻   
著 者 下掲の【補記】に列挙
発行人 小林茂
発行日 昭和30年8月5日〜31年2月20日
発 行 東京創元社
発行所 東京都新宿区小川町1−16
印刷人 曾根盛事 
判 型 新書判 上製カバー 無線綴じ 本文216〜288ページ
定 価 140〜180円


【ひとこと】谷川俊太郎詩集に先んじて創元社がだした詩論集である。全6巻であるが、第2巻および5巻がカバーが欠けていたため、4冊をならべてみた。ならべてみて、うかつなことに、はじめて色の違いがあることに気づいた。いったい、どこを見ていたやら。いまさら恐縮してもおそいが、小生は、けっこういいかげんなのである。ま、おわかりであっただろうが。

へらず口はおいといて、書名が書き文字のばあいと活字のばあいを、見くらべていただきたい。書き文字のほうは、やはり花森の個性が強く感じられてしまう。そこで花森安治は、小説や随筆はともかく、詩集に書き文字は不向き、と考えたのじゃないかしら。「人生はボードレールの一行に如かず」と芥川龍之介はいったけれど、詩人が言葉で築き上げた世界に、花森は立ち入らないようにした、と小生はおもうのである。

絵のほうは見てのとおりだ。魚と葉っぱらしき図だが、色がちがう。これは各々ちがう色で描き分けたのではなく、カラーチャートで色をさがして指定し、印刷ですり分けたのであろう。


大日本インキ化学『カラーチャート』第2版から


【もうひとこと】こんなことはデザインや編集関係者には、わかりきったことであるけれど、拙ブログをごらんくださっているのは業界人ばかりではないようだから、すこし補足しておきたい。製版時の色指定のことである。

カラー印刷の場合、インクはふつう4色、青赤黄の3色と黒をつかう。旧来のカラー印刷は、カラープリンターとちがって、版画のようにそれぞれインク別に刷り、4色を重ねてさまざまに色を作りだした。

このやり方を応用すれば、もとは黒一色の鉛筆画であっても、上の魚は赤、下の魚は青、葉っぱは黄と、それぞれ色を変えて印刷できる。それを色指定(色アミ指定)という。色の刷り分けに欠かせないのがカラーチャートで、これさえあれば一枚の鉛筆画を、ごらんの表紙のように印刷できるのだ。また、たとえば魚や葉っぱのまわりに描いてあった筈の鉛筆のふちどりも、黒インクの版を細工すれば消せる。

四種類の表紙をしさいに見ると、花森安治はかなり細かに指定し、あたかもそれぞれ別に絵を描いたように見せていることがわかる。いまなら花森は、じぶんでコンピュータを操作し、処理するだろう。63年前のきのう、昭和23年9月20日、花森安治は大橋鎭子ら数人のなかまと『美しい暮しの手帖』を世に出した。往事茫々——。


【補記】各巻の書名と執筆者
第1巻『私は詩をこう考える』
金子光晴、小野十三郎、北川冬彦、西脇順三郎、鮎川信夫、村野四郎、山本健吉、北園克衛、大岡信、安藤一郎、安東次男、北村太郎、中村稔

第2巻『私はこうして詩を作る』
草野心平、山本太郎、北園克衛、谷川俊太郎、北川冬彦、黒田三郎、安藤一郎、木原孝一、三好達治、壺井繁治、高橋新吉

第3巻『私はこうして詩を作る』Ⅱ
村野四郎、三好豊一郎、岡本潤、田村隆一、金子光晴、長島三芳、小野十三郎、深尾須磨子、田中冬二、山之口貘、西脇順三郎

第4巻『西洋の詩を読む人に』
深瀬基寛、安藤一郎、伊吹武彦、富士川英郎、除村吉太郎

第5巻『学校の詩サークルの詩』
巽聖歌、山本和夫、桜井勝美、国分一太郎、坂本越郎、関根弘、菅原克己、宇井英俊、藤島宇内、大江満雄、伊藤信吉

第6巻『現代詩はどう歩んできたか』
藤原定、神保光太郎、木原孝一、壺井繁治