2011年7月25日月曜日

茶の間の正義 山本夏彦

1967


書 名 茶の間の正義
著 者 山本夏彦(1915−2002)
発行人 上林吾郎 
発行日 昭和42年11月5日
発 行 文藝春秋
発行所 東京都千代田区紀尾井町3
印刷所 大日本印刷 
製 本 中島製本
判 型 四六判 上製無線綴じ 角背ミゾ カバー 本文290ページ
定 価 550円


表紙


章扉にも花森のイラストが

奥付 (最初の著書は翻訳書であったことがわかる)


【ひとこと】奥付を見てのとおり、山本夏彦にとって二冊目のエッセー集。しかも自社ではなく、他社から最初の上梓。それを花森安治が装釘した。これは、あんがい意外感がある。というのも山本は、『暮しの手帖』の商品テストについて、彼一流の辛辣な見かたをしていた。だが、ごらんのように、花森はとても丁寧なしごとをしている。ぶざまなしごとはできない、という花森の職人気質もあったであろうが、ものごとの本質を見きわめる山本の眼に、花森は共感するところが多かったのではないか、だからこそ山本も、花森をさして「悲劇の人」と評さざるをえなかったのではないか。——そこには山本の惻隠の情があった、と小生はおもう。


表紙全体

カバー全体


【もうひとこと】 山本夏彦の晩年の著作をよむと、出版界はいうにおよばず世事万端にたけた長老の粋な漫談のごとき悠々たる風情があるが、本書執筆当時は50歳前後、さしずめ旬の初鰹といった清新さにあふれている。ことばが光っている。文章がぴちぴち跳ねている。読むものを、ときに挑発し、ときに笑わせ、そしてうならせる。一流の諧謔家としての本領を、山本はここに確立した観がある。とりわけ本書は、これからマスコミ業界で働こうとする若いひとにとって、得るところが多い。

山本夏彦も花森安治も、とてもオシャレであった。見習うべきは、そのダンディズムであろう。ざんねんながら、小生は習い損じた。そも資質において、遼か遠く及ばない。されど憧れは抱いていたい。