2011年4月18日月曜日

或る山村共同耕作の記錄 櫻井恒次

1944


書 名 或る山村共同耕作の記錄
著 者 櫻井恒次
発行人 杉山雄一郎 
発行日 昭和19年11月30日
発 行 大日本出版株式会社
発行所 東京都京橋区銀座1−5
印刷者 安達信雄
印刷所 大日本印刷株式会社
製 本 河上製本
判 型 A5判 並製平綴じ 本文236ページ
定 価 3円18銭(税込)


奥付

【ひとこと】大政翼賛会在職中の作品である。著者の櫻井恒次は、卒業年度から察するに花森安治の後輩にあたる。奥付にあるように当時の財団法人大学新聞社は、各大学新聞を統合し全国紙を発行していた。櫻井はその常務理事であり、東大構内の新聞編集部に出入りしていた面々と設立したのが「青年文化会議」で、初期のメンバーに花森安治も加わっていた。同人には、農村における食糧増産と文化啓蒙運動にすすんだグループがあり、櫻井はその実践家の一人であった。

宮守正雄『ひとつの出版・文化界史話』によれば、櫻井は敗戦直後、花森らと出版社をつくろうとしたが、青年文化会議内の「観念性」がしだいに強まったせいか、花森も距離をおくようになり、実現しなかった。というよりも、衣裳研究所での花森のしごとが忙しくなったからであろう。ちなみに出版社の設立準備中、仲間のひとりが野間宏で、花森は野間にレイアウトなど編集技術を教えたという。野間宏はその後『黄蜂』編集部に移っている。

ウラ表

【もうひとこと】表紙は、一見すると絣(かすり)の端布をならべた写真のようだが、花森が描いた絵である。これなどには佐野繁次郎が装幀した改造社版新日本文学全集のカバーの影響が感じられるが、やはり両者の大きなちがいは描き文字であろう。佐野は、かちっとした漢字を書けなかった人のようにおもう。また、ホワイト・スペースのとりかたにも、画家と編集者のちがいが表れているようにおもう。


表紙全体