2011年4月13日水曜日

句文集 松江 森川辰郎

1954


書 名 句文集 松江
著 者 森川辰郎(1926−?)
発行人 臼井喜之介(1913−1974)
発行日 昭和29年11月20日
発 行 臼井書房
発行所 京都市左京区北白川京大北門前
印刷者 吉澤信夫
印刷所 平和印刷
製本所 加藤製本
判 型 B6判 上製 角背ミゾ平綴じ 函入り 本文174ページ
定 価 250円


扉(別丁和紙)
奥付

【ひとこと】森川辰郎は、前回紹介した辻久一『夜の芸術』の発行人、すなわち審美社の経営者。旧制松江高校では花森安治の後輩にあたる。みずからの句文集を、臼井喜之介の臼井書房からだしたところに、森川のこだわりがうかがえる。臼井は詩人であり、『新生』を戦前再刊した編輯者としても知られる。林哲夫さんのブログをごらんください。
http://sumus.exblog.jp/14679007/

尊敬する編輯者の手にゆだね、上梓してもらうのは、著者としてなによりの喜びであろう。

ウラ表紙
表紙全体

【もうひとこと】句集といえば、花森安治は前の年、佐藤念腹『念腹句集』を装釘し、暮しの手帖社からだしている。句集であることを意識してか、簡素ながら趣のある装本で、あるいは森川は、そのできばえに魅了され、装釘をたのんだのかもしれない。花森は毛筆をつかい、力強く大胆な構図でありながら、風情のある装釘にした。

函には、書名も著者名もない。 和紙に印刷した紙片を背に貼っているだけ。 しかし松江に暮したことがある人ならば、函に書かれているのが松江の町名であることが、すぐわかるだろう。すべて「松江」なのだ。松江には、いまも昔の町名が生きている。町名には、そこに住んだ人びとの暮しのよすがと、歴史がある。筆書きでありながら、どこかにモダンさを感じさせるのは、明朝体活字のもつ特徴を生かしているからではないだろうか。


函 おもて
函 背
函 ウラ

【おまけ】下は、函をこわすわけにもゆかず、天地をのぞいて表裏と背をコピーして合成した。北殿町をのぞき「町」の字を田と丁の上下にわけて書いたことが、はっきりわかる。根拠あってのことだとおもうが、見た目がすっきりしていい。

この中にはないが、松江市袖師町にある島根県立美術館で、来年2月24日〜4月2日、「暮しとデザイン」というテーマで花森安治の展覧会が予定されている。訪れたひとに希望と元気をあたえるだろう。


函を展開すると(ただし合成)