2011年6月13日月曜日

私の卒業論文

1956


書 名 私の卒業論文
編 者 東京大学学生新聞会 
発行人 北川竹蔵 
発行日 昭和31年12月15日
発 行 同文館
発行所 東京都千代田区神田神保町1−23
印 刷 旭印刷株式会社
製 本 栄久堂製本
判 型 B6版 上製角背ミゾ平綴じ カバー 本文178ページ
定 価 180円


表紙


奥付

【ひとこと】あとがきによれば、本書は週刊『東京大学学生新聞』に連載したもので、文学部の学生に卒業論文の書き方をアドバイスしたかったようである。執筆者は掲載順に下のごとし。

 阿部知二、中村草田男、上林暁、岩崎昶、柳宗悦、花森安治、池島信平、山岸外史、高橋義孝、渡辺一夫、舟橋聖一、梅崎春生、扇谷正造、井沢淳、前田陽一、呉茂一、山根銀二、コバヤシ・ヒデオ、林健太郎、飯島正、渡辺紳一郎、田辺尚雄、山村聰、神田隆、麻生磯次、山下肇、桶谷繁雄、倉石武四郎、安部能成、吉田精一、福武直、高松棟一郎、阿川弘之、池上鎌三、中村真一郎、藤森成吉、山路閑古、今泉敦男、宮本正尊、斯波義慧、岡崎俊夫(41名)

花森安治は「世界最初の衣裳美学」と題して寄稿している。

花森安治「世界最初の衣裳美学」

【もうひとこと】しかし助言というよりも、謙遜と含羞のオブラートにつつみながらの、自画自賛という感じがしないでもない。功なり名をとげた面々であれば、それもむべなるかなであろう。編集者もそのところはよく心得たもので、巻末に「〝卒業論文〟を完成させるために」と別章をたて、井上究一郎、服部静夫、村川堅太郎の三人に、実用的なアドバイスをもとめている。花森安治(だけではない)が、いくら優秀な先輩で、ユニークな論文を書いたとはいえ、そいつを学生たちがこぞってまねた日にゃあ、大学だってこまるもの。

本体表紙

カバー全体(東大のレンガ塀)

【おまけ】今月18日、『花森安治戯文集1』が刊行される。花森安治の『逆立ちの世の中』(河出書房1954年刊)を主に、これまで未収録の著作や対談等をあつめ復刻した。花森安治の人と言説を知るためには格好のアンソロジーといえよう。

ちなみに『逆立ちの世の中』の「ボクのこと」という一章には、「世界最初の衣裳美学」が「二度書いた卒業論文」と改題しておさめてあり、こんかいの復刻でそれも読める。

言わずもがなながら、気取ってみせたのだろうが、戯文集のタイトルは「たわむれ」に書いた文集のごとき印象をあたえる。戯曲や戯作者のそれとおなじで、井上ひさしが好んで揮毫した「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに書くこと」の意である。誤解なきように。価格2625円は、ちいと高いけれど、どうぞ、お買い上げのほどを。出版取次 JRC。