2011年3月7日月曜日

けやきのちかい 新青年文化協會編

1948

書 名 けやきのちかい
編 者 新青年文化協會
発行人 中村梧一郎 
発行日 昭和23年2月1日
発 行 八雲書店
発行所 東京都文京区森川町111
印刷者 塚田十五郎
印刷所 塚田印刷所 
判 型 B6判 上製平綴じ 本文246ページ
定 価 120円(改訂価)

目次

【ひとこと】戯曲集である。戦後、八雲書店が発行した農山漁村むけ雑誌『若い農業』にのせた脚本をあつめたもので、目次をみてわかるとおり、作者の革新性はつよいが、一つの政党色にはそまっていない。民主主義のありかたや、自由をもとめ啓蒙する作品がおさめられている。

花森安治の表紙から、農山漁村という雰囲気は、つたわらない。疎開先から都市へもどったばかり、荷をほどく前といったところ。それに比して扉の絵は対照的だ。背負子(しょいこ)をていねいに描いている。都会育ちや若い人にはなじみがないだろうが、荷をせおうための暮しの民具であった。むかしは都会の小学校でも、校庭で二宮金次郎少年が愛用していたから知られていたけれど、いまは地方でも見かけない。ただ、小生が子どものころ丹波の山里で目にしたものと、花森がえがいたものは、すこし構造やつくりがちがうようだ。

それにしても花森の描く表紙には、こうもり傘がよく登場する。コンビニでビニール傘が買えるいまの生活感覚では、井上陽水の名曲『傘がない』すらも、きっと理解しがたいにちがいない。

見返しに貼った奥付、値札も貼り直してある
ウラ表紙

【もうひとこと】八雲書店と中村梧一郎についての資料は少ない。比較的まとまっているのは、大輪盛登著『巷説出版界』(エディター叢書14、エディタースクール出版部1977年刊)であろう。これには『暮しの手帖』と花森安治についての一章もおさめてあり、戦後の出版界について教えられるところが多い。ただし、著者もことわっているように「巷説」の部分もある。

表紙全体