2011年6月24日金曜日

本棚の前の椅子 福原麟太郎

1959


書 名 本棚の前の椅子   
著 者 福原麟太郎(1894ー1981) 
発行人 車谷弘
発行日 昭和34年5月25日
発 行 文藝春秋新社
発行所 東京都中央区銀座西8−4
印刷人 田中昭三
印 刷 凸版印刷株式会社
製 本 中島製本
判 型 B6版 上製角背ミゾ平綴じ カバー 本文308ページ
定 価 280円


カバー裏

カバー全体


【ひとこと】福原麟太郎は、名著『チャールズ・ラム伝』をのこした英文学者であり教育者。本書あとがきによれば、書名は『文學界』に同名タイトルで連載したエッセーにもとづく。しかし著者の名まえは背文字にあるだけで、カバーにも本体表紙にもない。書店の平台につまれたときの状態を想像すると、ずいぶん大胆な装釘だ。きっと福原のエッセーは評判がよかったのであろう。内容もさりながら『本棚の前の椅子』という書名はおしゃれだし、本を手にしたときの心のときめきを感じさせて、小生はすきだ。

本体表紙


奥付


【もうひとこと】たとえば「雑誌を読む楽しみ」と題した一文がある。その結びの数節をかきぬいてみよう。原文はすべて正字。

——私は今でも私を夢中に、と言つてよいほど一所懸命に読ませる雑誌があることを幸福に思つている。その一つは、古くからある英語英文学の雑誌である。家の者は、その雑誌が来ると、ペーパー・ナイフを添えて私のところへ持つて来てくれる。私はいきなり封を破いて、一頁ずつナイフで頁を切りながら、しばらくは息もつがせず読み耽るのだ。ああ、この人は新しい人だな、この男はどうしてこんなにねじけて来たのだ。ああ、これは解らない。若い人の言うことはちんぷんかんぷんだ。早く年をとつてくれよ。——

このアンカットの雑誌について、英米文学を専門とする畏友野間正二が、つぎのようなメールをくれた。「この雑誌は、明治31年?ごろに創刊された『英語青年』だと、わたしも思います。わたし自身も、きれいに裁断されていない、袋とじのままの『英語青年』を見た記憶があります。しかし、少なくともわたしが勉強を始めた頃には(40年くらい前には)、もう裁断されていました」——もつべきものは友なり。