1965 初版 |
書 名 お母さまのさんすう *暮しの手帖の本
著 者 矢野健太郎(1912−1993)
発行人 大橋鎭子
発行日 昭和40年11月20日
発 行 暮しの手帖社
発行所 東京都中央区銀座西8−5
印 刷 青山印刷株式会社
判 型 181×115 並製 平綴じ 本文252ページ
定 価 320円
1984 改訂新装版 |
書 名 お母さまのさんすう 改訂新装版
著 者 矢野健太郎(1912−1993)
発行人 大橋鎭子
発行日 昭和59年4月1日
発 行 暮しの手帖社
発行所 東京都港区六本木3−1−1興和ビル
印 刷 青山印刷株式会社
判 型 B6判 並製ビニカバー 平綴じ 本文348ページ
定 価 1200円
【ひとこと】『お母さまのさんすう』初版は、暮しの手帖本誌に昭和34年から36年にかけて同じタイトルで連載したものをまとめたもの。改訂新装版は、花森安治なき後、昭和53年末から昭和57年にかけて連載したものをまとめたもの。同じ書名だが、当時の小学校の学習指導要領の改訂にもとづいているため、ほとんど別の本とうけとめてよい。
判型こそちがうが、表紙に花森の絵をそのままつかっているため、初版と改訂新装版のちがいに気づきにくい。しかし、あらためて見くらべると、いまさらながら首をかしげてしまう。どこがどう違うか、上に花森安治の初版、下に編集部が「装訂」した改訂新装版をならべ、ごらんにいれる。諸賢も見くらべてほしい。
<表紙全体>
花森安治装釘 初版 |
編集部 改訂新装版 |
<表紙ウラと見返しに掲げた花森安治のプロローグ>
花森安治オリジナル |
編集部による加筆 |
<とびらの書体と大きさ>
花森安治オリジナル |
編集部による書体変更 「装訂 花森安治」と記載 |
<奥付>
花森安治オリジナル |
編集部によるレイアウト変更 |
【もうひとこと】花森安治は、なにからなにまでやった。他人にまかせられない質であった。そのかわり部員には、「ボケーッと見ているだけじゃなくて、じぶんならどうするか、それをいつも考えろ」と言い聞かせた。
絵を流用したのだから、初版になかった花森安治の名まえを入れたのは当然としても、なぜ「装訂」の字を冠したのだろうか。花森にとってソウテイとは「装釘」でなくてはならなかった。
詩のようなプロローグを学習参考書の惹句のようなコピーに変え、とびらの書体まで変えて、あげくに「装訂 花森安治」とは、なんという皮肉であることか。それでも花森は、ひとことの反論も弁解もすることはないだろう。かかわりがあったならば言い訳せず、みずからの責任として受けとめる。花森安治はそういう男子であった。小生はですぎたまねをしているのである。
【補記】『お母さまのさんすう』は、矢野没後の1998年、茂木勇監修による改訂新版がでた。表紙にそれを明記している。現在は、いずれも絶版。編集会議でいった花森の予見は、やはりあたっていた。