1953 |
書 名 女子學生ノート
編 者 阿部知二(1903−1973)・清水幾太郎(1907−1988)
発行人 美作太郎
発行日 昭和28年3月31日
発 行 新評論社
発行所 東京都中央区日本橋茅場町1−8
印 刷 株式会社耕文堂
製 本 長山製本所
判 型 B6版 上製丸背ミゾ 平綴じ 本文252ページ
定 価 280円(地方売価290円)
扉 |
奥付 |
【ひとこと】女子学生を対象とした啓蒙書。アンソロジーである。執筆者は下のとおりで、女性ばかりではない。
清水幾太郎、神近市子、帯刀貞代、丸岡秀子、上原専禄、戸板嵐子、小出證子、阿部知二、大塚金之助、硲伊之助、小田切秀雄、木下順二、園部三郎、加藤橘夫、土岐善麿、羽仁説子、勝田守一、佐田稲子、黒田耀子、大河内一男、山木杉、平塚らいてう、山川菊榮、山本安英(24名)
本書刊行時、女子大生はすくなかった。いま読むと、女性がかいたもののほうがリアルでおもしろい。たとえば平塚らいてう(1886−1971)の、つぎの一節。
——今のように電車があるわけでなく、毎日少なくとも三里や四里は歩いていたわけで、セル縞袴に、ほんとうなら、靴をはくべきところを、歩き易いので私は日和下駄をはき、短刀を袴の下にひそませて、毎日東京の町を東奔西走して、少しも疲れというものを知りませんでした。
ちなみに花森安治は高校受験浪人中、平塚らいてう著『円窓より』を神戸市立図書館で見つけて読み、それが婦人問題に関心をもつきっかけとなったという(朝日新聞学芸部編『一冊の本』所収/雪華社1963年刊)。
表紙全体 背文字箔押し |
カバー全体 |
【もうひとこと】本書を板行した新評論社の美作太郎(1903−1989)は、戦時中の言論弾圧いわゆる横浜事件で、特高に逮捕連行され拷問をうけた一人。その痛みを、わたしたちはつねに想像しなくてはならぬ。彼らの冤罪がはらされるまで68年もかかった事実を忘れてはならぬ。日本には、天災人災を問わず、被害者をまもる法律が不十分なことも。