1952 |
書 名 風流落語お色け版
編 者 安藤鶴夫(1908−1969)・日色惠
発行人 櫻井光雄
発行日 昭和27年7月5日
発 行 株式会社早川書房
発行所 東京都千代田区神田多町2−2
印刷人 佐野眞一
印 刷 明和印刷株式会社
判 型 B6版 並製 平綴じ 本文228ページ
定 価 140円
扉 |
【ひとこと】『風流落語お好み版』の姉妹編である。表紙をみてもわかるように、お色け版と銘打ちながら、それらしき色香は感じられない。あでやかな柄の絣でつくった座布団と、扉にえがかれた下着が、わずかに気配を感じさせるだけ。目次画にいたっては都会の街の景色。花森安治にとって、それが精一杯であったようにおもえる。
以前にも書いたが、家庭にもちこんで、子どもの目にふれてもあわてないですむ出版を、花森はしたかった。その種の本や雑誌の存在を否定していたのではなく、ケジメをつけたかったのだとおもう。通勤電車の中で、裸同然の写真をのせた新聞を広げている御仁がいるけれど、そんな殿御でもやっぱり家には持って帰らない(帰レナイ)ものね。
目次 前部分 |
目次 後部分 |
奥付 表3広告 |
【もうひとこと】奥付をみて気づくが、発行が田園社から早川書房にかわっている。しかし発行人も所在地も同じで、もともと早川書房のあったところ。ちがうのは以前、このブログで吉川英治『青空士官』を紹介したときの発行人が早川清であり、それがこの風流落語二冊では櫻井光雄になっていること。
早川書房は、演劇雑誌『悲劇喜劇』を創刊した老舗出版社である。昭和28年から推理小説本の出版を本格化させるにあたって、分社する考えでもあったのだろうか——あくまでも小生の憶測。
広告のために花森は新しくカットをかいている。下足札を声に出してよむと「いの一番」。これについてはいずれふれたい。
『風流落語お好み版』『風流落語お色け版』の二冊を続けてごらんにいれた。気になることがあった。なぜお色け版だったのか。ふつうお色気とかくだろう。気を「け」としているのが気にかかったのだ。で、二冊ならべてじっくり見た。はたして「好色」の二文字がうかびあがったではないか。うがちすぎかもしれないが、二冊のタイトルのつけ方は、なかなか奥がふかい。藝って艶だよね。