1954 |
書 名 新聞の片隅の言葉 天声人語から
著 者 荒垣秀雄(1903−1989)
発行人 大橋鎭子
発行日 昭和29年3月10日初刷
発 行 暮しの手帖社
発行所 東京都中央区銀座西8丁目5
印刷人 青山與三次郎
印 刷 青山印刷株式会社
製 本 清水茂登吉
判 型 B6判 上製カバー丸背ミゾ 平綴じ 本文418ページ
定 価 340円
本体 表紙 |
扉 |
目次(部分、クリックで拡大) おもしろそうな見出しがならんでいる |
【ひとこと】荒垣秀雄5冊目の「天声人語」自選集。昭和27年9月から同28年8月まで223篇をおさめる。花森安治は、本書のサブタイトルを、既刊では「天声人語より」であったのを「天声人語から」に変えた。花森にしてみれば、どちらでも良くはなかった。「より」よりも「から」のほうがフランクさを感じさせる。たかが天声人語されど天声人語なのであろう。「神は細部に宿る」とは、アメリカ人の建築家が言ったことばらしいが、至言である。
本書中の「関東大震災三十周年」に、こんな一節があった。
——大風呂敷といわれた後藤新平は震災後の大都市計画を立てたが政府に英断なく、わずかに若干の幹線道路と隅田川の壮麗な橋々を残しただけで小細工の復興に終った——
これを教訓として生かせるか、あるいは同じ轍を踏むか。すでに政治への信頼は地に堕ちている。政治家諸君諸嬢、しっかりしろ。
奥付のデザインに花森安治の特徴が出ている。子持ち罫(太い罫と細い罫の2本からなる)は、花森がよくつかった罫線であった。活版時代は、写植のような飾り罫はなく、必然的につかえる罫の種類はかぎられていたけれど、それでも使い方にデザイナーの個性があらわれてしまう。戦争中の出版物にも、名まえこそ記されていないが、花森の関与がうかがわれる装本がある。
奥付 |
本体 表紙全体 |
カバー 全体 |
【もうひとこと】本書のカバーは、暮しの手帖社初期の刊行物にいくつかあるのと同じで、天地を判型の大きさにカットしないで、全体をつつむようにしてある。本そのものはハードカバー上製だから、いわゆるフランス綴じというのではなさそうだが、発想はそれに近い。花森がいった言葉をおもいだす。
——本を買ってきたら、箱もカバーもすてるもんだよ。だいじにとっておきたい本は、しっかりした表紙をつくって、じぶんで装釘するのがほんとうなんだ——
きっとそうなんだとおもうけれど、カバーをして、オビもちゃんと巻いて、箱があったら箱にいれ、そのまま読みもせず、本棚に飾っておきたい愛書家だって世の中にはいる。ここに少なくとも一人、花森安治の装釘本をあつめている酔狂が、いるじゃあござんせんか。
【おまけ】ツイッターの情報によれば「【花森安治生誕100年】2012年2/24~4/2に島根県立美術館さんで開催する展覧会“暮しとデザイン-『暮しの手帖』 花森安治の世界(仮)”の準備が始まりました。暮しの手帖社で所蔵している資料を学芸員さんとともに調査しました。」らしいですよ。