2011年5月6日金曜日

歴史日本 特輯 宣長と篤胤

1943

誌 名 歴史日本 特輯 宣長と篤胤 5月号
編輯人 長坂金雄
カット 岩下邦鞆
発行人 長坂金雄 
発行日 昭和18年5月1日
発 行 雄山閣
発行所 東京都麹町区富士見町2−8
印刷者 吉原良三
印 刷 康文社印刷所
判 型 A5判 上製平綴じ 本文共174ページ
定 価 60銭


目次
「編輯後記」と奥付

【ひとこと】『歴史日本』(歴は正字)は昭和17年7月、「国家思想・民族意識の覚醒はまづ歴史の認識を広く一般に植つけるにあるとの見地から、正しい広義の歴史認識の普及、引いては、国民思想の統制、時局認識の把握を目的として」創刊されたのであるが、昭和19年3月、印刷用紙の不足により通巻21号で廃刊となった。掲載内容は、アジテーションとは遠く、きわめて学術専門性が高い。

戦時中の花森安治のしごとは、大政翼賛会という組織の「匿名性」にかくれ、戦意昂揚の宣伝業務にあけくれていたかのような誤解(というよりも無知)があるが、実名で発表した著作物ものこっている。この『歴史日本』の装釘もその一つであるけれど、上述の刊行趣旨をふまえて花森の表紙をみると、いっそう意外な感じがするにちがいない。コテコテの国粋思想雑誌というよりは、かつてのJALの企業カラーに通じるような、ハイカラな国際ムードがただよう。デザイナーがクライアントの言いなりになっているとおもうのは、あまりに浅はかではないのか。


左『朗讀詩集 常盤樹』 右『愛國詩集 大詔奉戴』
同上詩集のウラ表紙

【もうひとこと】大政翼賛会文化部が編集発行した2冊の詩集がある。他と同様、これにも装釘者の名は記されていない。しかしながら、正方形と色彩だけであらわした単純で明るいデザイン、タイトルを左から右へ表記するところなど、『歴史日本』との共通性が感じられないだろうか。

ちなみに 『愛國詩集 大詔奉戴』には、森川辰郎『松江』を版行した臼井喜之介の詩『望南記』を収めている。空をとぶツバメにことよせ、ふるさとの父母、ふるさとの山河におもいをはせる戦場の兵士のこころをうたう。