2011年5月16日月曜日

何も知っちゃいない話 乾信一郎

1953

書 名 何も知っちゃいない話 世界奇話夜話集 
著 者 乾信一郎(1906−2000)
発行人 河端昇 
発行日 昭和28年7月15日
発 行 白燈社
発行所 東京都千代田区神田神保町2−7
印刷人 松浦九一
判 型 B6判 上製カバー丸背ミゾ 平綴じ 本文244ページ
定 価 220円


本体表紙
本文 見出しカット
奥付

【ひとこと】乾信一郎、本名上塚貞夫はシアトル生れ。昭和13年に『新青年』第5代編集長をつとめるも経営陣と意見が合わず退社した。日中戦争がはじまり、同誌も編集方針をかえ、探偵小説のような娯楽読物をへらし、戦時色のつよい読物を多く掲載するようになっていた。

乾信一郎は、はじめ乾信四郎のペンネームをつかおうとしたらしい。だが音読すると「かんしんしろう=感心しろ」になる。さすが気がひけて信一郎にしたという。真偽のほどはさだかではないが、こういうところが乾の人柄であり持ち味であって、だからこそ経営陣と衝突したのであろう。穏和なユーモリストほど芯は強い。


カバー全体
表紙全体
【もうひとこと】花森安治が装釘した本は、その著者と花森との間のどこかに接点があるばあいが多い。本書は23篇の滑稽譚からなるが、花森はその一つひとつの見出しにカットを描いた。ジャズでいえば気分よくスウィングしているのだ。花森もジョークがすきであった。きっと意気投合するところがあったのだろう。

世の中からジョークやユーモアが少なくなったような気がしませんか。こんなときだからこそ、テレビやラジオは、往年の寄席の名人芸を、くりかえし放送してほしいものだ。日本の上質の笑いがある。