2011年5月13日金曜日

座談 昭和23年3月号

1948 


誌 名 座談 昭和23年3月号 第2巻第3号
発 行 文藝春秋新社
発行日 昭和23年3月1日
発行人 池島信平
編集人 鈴木貢
目次画 鈴木信太郎
印刷人 大橋芳雄
印 刷 共同印刷株式会社
判 型 A5判 平綴じ 表紙共全68ページ
定 価 25円

【ひとこと】表紙をみて、『佐野繁次郎装幀集成』(みずのわ出版)をひらいた。表紙の右上に、横顔の女性の彩色デッサンがある。画のタッチや色合い、フランス語の添え書きまで、佐野繁次郎によく似ていないだろうか。

花森安治は大学時代、佐野繁次郎にみとめられ、パピリオ宣伝部で働いた。すでに佐野は画家としての地位を確立していたが、本来の画業のほか広告や出版にも活躍の場を広げていたときで、佐野にとって花森は、しごとを器用にこなし、有能でたよれる部下であった筈だ。

その経歴が、戦後の花森に、なにをやっても「佐野のマネ」というレッテルを貼らせることになった。独り立ちしたいとねがう者にとって、マネという評価は「才能がない」にひとしい。その世評を、どうすれば払拭できるのか。花森は考えたにちがいない。

その一つの回答が、この表紙にあらわれていると思う。 「マネをするくらい、かんたんにできますよ」というところを見せればよい。その上で花森は、佐野にはかけない絵や文字をかけばよい。——みずからの画風にこだわらない。芸術家ではなく、職人としてなんでもやる。その覚悟が、花森をして編集者の自由な道をあゆませることになった。

それはとりもなおさず、装幀家佐野繁次郎と編集者花森安治という個性ゆたかな大きな二輪の花を、戦後の出版界に咲かせることになった、と小生はおもう。


佐野繁次郎装幀集成 2006 みずのわ出版

【補記】ブロガーのメンテナンスにより、通常更新が1日おくれるとともに、なぜか修正まえの草稿がアップされました。こちらが本稿です。