1948 |
書 名 肉體の文學
著 者 田村泰次郎(1911−1983)
発行人 草野貞二
発行日 昭和23年2月10日
発 行 草野書房
発行所 東京都杉並区松ノ木町1115
印刷所 日本紙工印刷合資会社
判 型 B5判 上製平綴じ 本文口絵共290ページ
定 価 100円
扉(蔵書印あり) |
奥付 |
【ひとこと】シュルレアリスムっぽい絵を版画ふうに仕立てた表紙。扉の描き文字もふてぶてしく、あたかも「肉食系男子」を表現しているようだ。このエッセイ集は、田村泰次郎のこんな感慨から始まる。
——私の「肉體の悪魔」について、ある批評家が「この作品には思想がない」と指摘してゐた。最近書いた「肉體の門」についても、批評家は同じ批評を下すにちがひない。その批評を見たとき、私は近代の日本人の「思想」といふものの考へ方を、改めて考へさせられた。——
大宅壮一が『無思想人宣言』で、花森安治もまた無思想の一人に数えあげたからでもなかろうが、花森に「思想」がないと評した者は、すくなからずあったとおもう。田村ではないが、かれらのいうのが「思想」とよぶものであるのならば、ないといわれて「光栄である」と、花森も甘受したことであろう。河合隼雄が評したように、花森安治には「手ざわりの思想家」という称号がふさわしい。
本書最後のエッセイのタイトルは「機關車の美しさ」——鉄道機関車の雄々しさに、こどものように感動する田村の心性は、花森安治のそれとまったく同じで、気があうはずだとおもった。
巻末ページ(刊行物案内) |
表紙全体 |
【もうひとこと】草野書房の草野貞二の名は、さきに紹介した日本読書新聞社『最新出版社執筆者一覧』昭和21年度版に、新興音楽出版社の代表者としても記載されている。じつは楽譜出版社の看板のほうが社歴は古く有名なのだ。現在のシンコーミュージック・エンタテイメントは、草野貞二の子息昌一が継いで発展させた音楽出版社である。ちなみに草野昌一は、いまや伝説のテレビ人気音楽番組「ザ・ヒットパレード」で輸入紹介したアメリカンポップスの訳詞家、漣健児の名で知られ、渡辺晋と共にわが国60年代ポップス歌謡界を牽引した。