1948 |
書 名 神聖受胎
著 者 高見順(1907−1965)
発行人 永井直保
発行日 昭和23年3月25日
発 行 永晃社
発行所 東京都世田谷区下代田町92
印 所 永井印刷工業株式会社
印刷所 東京都中央区入船町2−3
判 型 B6判 上製糸綴じ 丸背ミゾ 本文338ページ
定 価 110円
見返し(前後同一デザイン) |
扉 |
奥付 |
ウラ表紙 |
【ひとこと】花森安治は、永晃社「青春叢書」も装釘した。購買対象を女性にあてこんだ叢書である。この表紙はそれと同じおもむきで、若い娘を描いている。けれど、どうも花森らしくない。なぜかしら。こんど刊行された『花森安治戯文集2』に、「中原淳一を語る」という花森の中原淳一評がおさめてある。こんな箇所があって、ちょっと納得。
——彼(=中原淳一)が、いまさら芸術家扱いされたがったり、「抒情画家」でなく「画家」になりたがったりすることは、愚劣である。インテリぶる必要などましてない。第一できない。
ふてぶてしく、俺は叙情画家である、俺は少女相手の画工である、とうそぶける不敵さ、その面だましいを身につけることである。その方が、かえって彼の悲願にも案外近づくことになるのではないか。
花森の、この歯に衣きせぬ批評は、中原やそのファンにはこたえたであろう。だが、まちがっていなかったことは、その後の中原のしごとを見ればわかる。いいかえれば、この批評にある「彼」を「私」におきかえれば、それはそのまま花森安治じしんの自戒になっているからだ。
表紙全体 |
【もうひとこと】この『神聖受胎』には、やはり永晃社版行の特装限定本がある。小生には古書価が高すぎて、手が出ない。いと口惜し。
ご存じのように、高見順と永井荷風とは、いとこの関係にある。 発行人の永井直保と荷風とのあいだに、もしや親戚関係がとおもったが、それはないらしい。
福島保夫『書肆「新生社」私史』に、高見順が暮しの手帖社にどなりこむエピソードがはさまれている。花森安治には、きわめて常識的な金銭哲学があった。それがときに誤解をまねいたようだ。