1955 |
書 名 編集者の発言
著 者 池島信平(1909−1973)
発行人 大橋鎭子
発行日 昭和30年2月20日
発 行 暮しの手帖社
発行所 東京都中央区銀座西8−5
印刷人 田中末吉(本文)・鈴木信司(表紙 有恒社)
印 刷 理想社印刷所
印刷所 東京都新宿区改代町24
製 本 清水茂登吉
判 型 B6版 上製丸背ミゾ カバー 無線綴じ 本文334ページ
定 価 250円
本体表紙 |
書名は花森の描き文字 |
扉 |
奥付 |
【ひとこと】池島信平の最初の本は暮しの手帖社から出た。上梓を提言したのが花森安治からであったことを、あとがきで明かしている。池島は大学でも花森の先輩だが、雑誌記者としても先輩である。菊池寛のもとで働き、戦争中は海軍で辛酸をなめ、戦後は文藝春秋新社を立ちあげた。そんな経歴をもつ池島の文章が、おもしろくないわけがない。編集者にとっては糧となる内容を多くふくんでいる。
カバーの劣化と褪色がざんねんだ。白地にならべた鉛筆。単純な構図なのに、音楽を感じさせる。鉛筆をとって、なにかを書いてみたい、そんな衝動にかられませんか。
本体表紙の書名は、活字のよう見えるが花森のかき文字。まん中に鉛筆を描き、書名を左右に分け、絵と文字を一体化させている。ただし、ウラ表紙の社名のみ型押しであるところを見ると、花森の意図どおりにはできなかったのではないかしら。
表紙全体 |
カバー全体 |
【もうひとこと】カバー、表紙、扉の書名と、奥付の書名をみくらべてほしい。発言を「發言」としているが、これは本文そのものも正字正かなであり、誤植ではない。花森たちの、戦後の「国語改革」への反発が、こんなところに現れているような気がする。漢字を書くとき、讀書を読書とかくように、字の画数をへらしてかくのは戦前からあった。
信平の「平」の字も、表紙と背文字でちがうが、どちらを書いてもマチガイではなかった。それを活字では使用できる漢字を制限し、かなづかいまで規制した。暮しを「暮らし」と書かなくてはいけないだなんて、よけいなお世話、というものじゃあござんせんか。ラぬきことば愛用者に、こればっかりは抜いてもらいたいもんだ。
【つけたり】今月2日、『花森安治戯文集2』が発売。本書には、拙ブログでも紹介した昭和28年東洋経済新報社刊『風俗時評』のほか、これまで未収録のエッセイ、コラム、講演、往復書簡などが収められている由。花森ファンは必読。価格は第1集とおなじ税込2625円。どうぞお買い上げを。