1975 |
書 名 女の食卓
著 者 田辺聖子(1928−)
発行人 野間省一
発行日 昭和50年5月16日
発 行 講談社
発行所 東京都文京区音羽2−12−21
印 刷 豊国印刷株式会社
製 本 藤沢製本
判 型 四六判 上製カバー 糸綴じ 本文230ページ
定 価 780円
表紙 |
表紙ウラと見返し |
扉 |
本文扉 |
奥付 |
【ひとこと】田辺聖子の短篇小説集である。この装釘に、花森安治がいかに熱を入れたか、表紙ウラから見返しにわたるイラストからも、十二分にうかがえる。田辺の小説の一部を、花森はローマ字で書きうつしている。ちょっとやりすぎじゃないの、と茶化したくなるけれど、田辺の本を装釘できるのが、よほどうれしかったのだろう。小生もうれしい。
なにをかくそう花森は、『週刊文春』連載の人気読物、田辺のカモカのおっちゃんシリーズの、かくれたファンであった。小生はそれを意外におもったものだが、意外におもうほうが、なにかに毒されていたのかもしれぬ。
表紙全体 |
カバー全体 |
【もうひとこと】田辺の小説にでてくる若い女性は、男の小生からみると、むしろ古風でつつましい。片意地はって、男をおしのけてまで進もうというようなタイプでは、けっしてない。いとおしくなり、抱きしめたくなるような女性を多く描いている。カバーに描かれた女性も、とても楚々と感じられるが、いかが。
それにしても、髪の色といい、ドレスの色といい、すてきだ。藤城清治が、花森の絵はデッサンがしっかりしていると評したが、人物画でもそれは言えるだろう。小生は専門家ではないが、ドレスの上からでも、女性のからだの線がなめらかで、ふくよかなことくらいはわかる。
カバー全体 |
【さらにひとこと】このような装釘が可能だったのも、まだウラがわにバーコードが入らない時代であったからだ。流通の効率化のためのバーコードは、装釘家やブックデザイナーたちの創造力に、重い「枷」をはめたのではなかろうか。小生寡聞にして、バーコードに正面切って異議をとなえている装釘家は、和田誠さんだけしか知らぬ。美しい装釘に、バーコードなんか似合わない。
花森安治は言っていた。——じぶんで考えようとせず、命令されてしか動けないなら、それは人間ではなくて奴隷だ。なっ、カラサワくん、きみの頭は帽子をかぶるためにあるんじゃないだろ、とね。