1969 |
函 背 |
函 ウラ |
書 名 笠信太郎全集 第一巻 世界と日本
著 者 笠信太郎(1900−1967)
著作権 笠初恵
発行人 大田信夫
発行日 昭和44年3月25日(全八巻/第五回配本)
発 行 朝日新聞社
印 刷 凸版印刷
判 型 B6判 上製布装丸背ミゾ函 糸綴じ口絵共本文732ページ
定 価 950円
表紙 |
扉 |
奥付 |
ウラ表紙 |
【ひとこと】笠信太郎は、戦後14年間にわたって朝日新聞の論説主幹をつとめた。笠信太郎の業績の大きさと信任の厚さを、なにより本全集の刊行があらわしている。
花森安治の装釘作品には、個人全集に準ずるものに、戦後まもない時期の『石川達三選集』(八雲書店刊)、『伊藤整作品集』(河出書房刊)などがある。 けれどその体裁の立派さ重厚さからいえば、本全集はひときわ力強く目立つ。
花森は、この装釘の絵柄にも、時計をえらんだ。笠が懐中時計を愛用していたのかもしれないが、時計によって笠の生きた時間を象徴したかったのであろう。ウラ表紙は、時計のウラ蓋の絵柄になっていて、そこに笠のイニシャルがデザインされている。生きるということは、個々人の時間を歴史に刻むことであり、大なり小なり時代の責任を担った、ということではないだろうか。
表紙全体 |
【もうひとこと】笠信太郎は『暮しの手帖』にも寄稿した。「日本人なくてななくせ」は卓見のエッセーで、小生も高校生のころに読み、目からウロコが大量に落ちたはいいが、なまいきにその受け売りをやって、周囲のヒンシュクを買ったものであった。しょうじきに白状すれば、笠が指摘した「くせ」を、小生は全部もっている。くせというヤツ、いちど身につくと、なおらないようである。
笠の「日本人なくてななくせ」は、暮しの手帖社から『なくてななくせ』と題して上梓されており、本全集第五巻にも収載されている。
全八巻の函のウラをならべたところ |
【さらにひとこと】本全集とは別に、ほぼ同体裁の『回想笠信太郎』がある。同時代に生きた人々による回想集であるが、こういうものにも時代の断面は映されており、意外と資料的価値は高い。
戦時下におかした大新聞のあやまちを批判することはやさしい。だが、いつでも問題は眼前にあり、責任が生じる。「船長不在」の巨艦から降りるか、あるいはとどまるか。どこへ向うにも、目はしと小回りのきくタグボートは必要とされる。 笠信太郎は、戦後朝日を牽引したジャーナリストであった。