2011年8月26日金曜日

極北の氷の下の町 中谷宇吉郎

1966


書 名 極北の氷の下の町   
著 者 中谷宇吉郎(1900−1962) 
序 文 茅誠司(1898−1988) 
発行人 大橋鎭子
発行日 昭和41年6月15日
発 行 暮しの手帖社
発行所 東京都中央区銀座西8−5
印 刷 青山印刷株式会社 
判 型 B6版変型 並製 無線綴じ 写真共本文224ページ
定 価 320円


表紙ウラに始まるリード


目次

奥付


【ひとこと】中谷宇吉郎は、前立腺ガンが骨髄にまで転移し、六十一歳の若さでなくなった。その早世を悼んで茅誠司が序文を寄せた。それを花森安治は、表紙ウラから本文最初のページに大きめのゴシックで組んで、リードとしている。この本は、低温科学の研究にいのちをかけた科学者、中谷宇吉郎へのオマージュである。


表紙全体

【もうひとこと】ガンの転移がわかり、もはや治療の術がないとわかってから、中谷は『暮しの手帖』へのエッセイ連載をひきうけた。十回の約束が五回でおわった。目次にある「まい日の科学」の五編がそれである。初回の「なにかをするまえに、ちょっと考えてみること」から次の一節をひく。

——今日の科学は、あまりにも分化し、かつ商業化している。その外観だけを見ると、科学は、一般の人々や、その主婦たちには、とうてい手のとどかない、はるか彼方のもののようにみえる。しかし、科学の本来の姿は、そういうものではない。(初出1961年 『暮しの手帖』第59号)

中谷は「生活に役立つものが、ほんとうの科学の姿だ」と、くりかえし説いた。しかし、福島第一原発の事故とその収拾にあたるさまをみていると、この半世紀、人類のために科学技術は発展したのか、疑わざるを得ない。カネと権力の前に科学が屈服しているかに見えてしまう。子どもの健康と、未来のいのちを守るために、科学者だからこそできることが、いっぱいあるとおもう。傍観者になってほしくない。