2011年3月2日水曜日

姉妹 眞船豐

1947

書 名 姉妹
著 者 眞船豐 (真船豊)
発行人 中村梧一郎 
発行日 昭和22年10月10日
発 行 八雲書店
発行所 東京都文京区森川町111
印刷者 竹澤眞三
印刷所 中央印刷社 
判 型 B6判 上製平綴じ 本文232ページ
定 価 75円


奥付
ウラ表紙

【ひとこと】満洲から引き揚げてきた姉妹をえがく戯曲である。テーマは敗戦後の日本社会への適応困難。しかし、ほんとうに困難をきたしていたのは姉妹ではなく、価値観の変革をせまられた男たちであり、その葛藤を描いた戯曲といえよう。

扉の靴の絵は、姉の文子のセリフ——ああ、ハルビンに帰りたい……あの楡や白樺の落葉が、街路の石畳の上にいつぱいカサカサと散つて……この足でコツコツと思ふ存分……石畳を靴の音を高く立てて踏んで見たい——から着想を得たのであろうか。

HARBINという靴底の文字に、あるいはブランド名かとおもってしらべてみたが、おそらく花森が遊びでつくった架空の商標である。
花森安治といえば、『暮しの手帖』の商品テストのイメージがつよいせいか、なにごとにも厳格で、ユーモアも通じないガチガチ人間とおもわれているフシがあるが、大きな誤解というべきだ。ものまねやダジャレがすきで、子どもみたいなところもある、たのしいオジサンでした。


表紙全体

【もうひとこと】姉妹がハルビンで住んでいた家は、ふたりのセリフから察するに、表紙の絵のような洋館らしい。壁にROMANOFKAというなにやらおもわせぶりな貼紙がみえるが、ハルビンが帝政ロシアの影響をうけた街であることは、ご存じの通り。ウィキペディアでハルビンをしらべると、けっこう詳しくのっている。音楽の朝比奈隆、山田一雄、加藤登紀子、絵画文藝では岸田劉生、尾崎放哉、早乙女貢、政官では伊藤博文、後藤新平、杉原千畝、そして近衛秀麿文麿ら、ゆかりのある日本人が多い。ウィキペディアの記述は、なかには気をつけないといけない項目もあるが、地理に関しては、信頼性が高いようにおもう。