2011年3月11日金曜日

知と愛 深田久彌

1948

書 名 知と愛 青春叢書
著 者 深田久彌 (1903−1971)
発行人 永井直保 
発行日 昭和23年4月10日
発 行 永晃社
発行所 東京都世田谷区下代田町92
印刷所 永井印刷工業株式会社 
判 型 B6判 上製糸綴じ 丸背ミゾ 本文300ページ
定 価 110円

見返し
ウラ表紙


【ひとこと】深田久彌は後年『日本百名山』で読売文学賞をとり、山岳随筆家として有名になったが、小説家として本書を上梓したころは、作家人生の谷底であったかもしれぬ。糟糠の妻と称せられた病身の北畠八穂をうらぎった後である。文人の私生活にはまれにある話だけれど、深田のばあい二重の弱味があった。もの思いにふけるように見える表紙絵の女性に、北畠の姿が、どうしても重なって見えてしまう。

扉とウラ表紙の朱印は、蔵書印。本を失くしたくない気持はわかる。でも、おす場所を考えないと、所有者の品性までもが疑われる。ま、蔵書印をもたぬ者のひがみかもしれないけれど。

本書は、永晃社の青春叢書の一冊である。叢書の全容を知らない。小生が把握しているのは 『知と愛』のほかには、南陀楼綾繁さんが所蔵する久米正雄『嘆きの市』、芹沢光治良文学館が所蔵する『美しき秩序』の 三冊である。(下記は芹沢光治良文学館のページ)

表紙はおなじ女性をモデルにしているとおもわれるが、衣裳やポーズはちがう。花森がえがく細面の女性をみていると、花森夫人の若かりし日がしのばれる。美しい人と評判であった。まさに美女と——やめておこう、「キミは、なんでもひとこと多すぎる」と、また叱られそうだ。

奥付

【もうひとこと】永晃社は、戦後、絵本などもだしていた出版社。発行者の永井直保の名まえで検索してみると、創元社がだした大岡昇平『野火』の印刷者としてひっかかり、とりもなおさずそれは永井印刷工業の経営者であった。兼業していたのである。出版業はやめてしまったが、印刷業のほうは現在も子孫にうけつがれ健在のようだ。
日をあらためて紹介するが、花森安治は永晃社がだした高見順『神聖受胎』の装釘もしている。


表紙全体