2010年10月16日土曜日

週刊朝日 昭和29年9月5日号

1954「九月のカレンダー」

誌 名 週刊朝日 昭和29年9月5日号
発 行 朝日新聞社
編集人 扇谷正造
判 型 B5判 中綴じ 表紙共全84ページ
定 価 30円

<今週の表紙>「九月のカレンダー」・・・花森安治じしんの解説
これは、表紙にはちがいないが、もちろん絵ではない。表紙は、なにも絵でなくてもいいではないか、というのは、もとより三文画工の表向きの強がりで、ありていにいえば、これは、月々、仕事場の壁にはりつけてあるカレンダーの一枚である。でき合いのこよみは、デザインより、第一文字が小さすぎて、日限り仕事に追われる身には、ちと間に合いかねる。そこで、忙しい忙しいとこぼしながら、毎月のはじめ、クレヨンで、こよみを一枚描いて、前月のと取りかえるクセがついた。もっとも、そのクセを、この雑誌にまで押しつける気は毛頭ないのだが……。

【ひとこと】本号には『岩堀喜之助という男・百万雑誌「平凡」の秘密』と題する記事が掲載され、花森の談話として岩堀評がのっている。岩堀はマガジンハウスの創業者であり、戦時中、大政翼賛会宣伝部で花森と机を並べた旧知の間柄である。
「こりゃ『ハモニカ』だね。ハモニカの好きな年ごろ、そのレベルを完全にキャッチしたのが『平凡』だ。ハモニカ級はいままで世間で大事にされたことがなかった。それを、押しつけちゃいけないが、対等にあつかい、尊重していくような顔つきで接すると、こりゃウケるのが当たりまえだ。事実、岩堀を見ていると、九〇パーセントまでは本気でハモニカ級の友達になっているからね。これが大切だ。インテリはだまされやすいが、ハモニカ級は動物に近い本能で、かぎわける。岩堀はインテリの分からないハモニカ語を理解できる。一つは中国の宣撫工作で覚えたテクニックかもしれない。シリにツギの当った背広をきたり、住宅でも社長は最後でいいという考え方、これをキザとは思わないが東洋的モラルの岩堀趣味だ」。
ーーまるで花森じしんのことを言っているようだ。