1951「絣<かすり>」 |
誌 名 週刊朝日 昭和26年7月8日号
発 行 朝日新聞社
編集人 扇谷正造
判 型 B5判 中綴じ 表紙共全56ページ
定 価 30円
<今週の表紙>「絣<かすり>」・・・花森安治じしんの解説
物心ついてから、もめんというもの、明け暮れに馴れもし、なじみもしている筈でいて、はじめて眼にしみ骨身にしみて美しいと思ったのは、例の空襲のどれかの朝、泥まみれのゲートルの足で、あわや踏みつけようとして拾い上げた、焼けのこりの唐桟縞の端っきれ。鮮かな藍のいろが、なまじ痛々しいほどで、以来もめんは、わが絵となり、わが文字となった。田を作るすべも知らず、さりとて、文字を並べて詩にならず、絵具をこねて画にもならぬ、おろかな才をなげきたい折々は、ちびたチャブ台の隅に、もめんぎれをならべてわずかに遊びもするのである。所詮は、侘しい日本の暮しの片隅で、ほそぼそと吹いてみる、いわば歯のかけて、音色もたどたどしいハーモニカのひとふし、これを詩といい、画とよぶ思い上りは、もとよりありません。
【ひとこと】表紙コンクール参加作品である。
週刊朝日はこの年、5月13日号から8月19日号まで、15人の画家に表紙をかいてもらい、読者にどの表紙が好もしかったか投票させ、順位を競わせた。投票者には抽籤で、高額賞金にくわえて原画を贈った。ちなみにコンクールに参加した画家は掲載順に、小磯良平、佐藤敬、岩田専太郎、東郷青児、小絲源太郎、木下孝則、児島善三郎、宮本三郎、花森安治、宮田重雄、林武、三岸節子、猪熊弦一郎、荻須高徳、岡田謙三。なかで独り絵をかかなかった花森安治に、編集者としての節度とはじらいを感じるのだが、結果やいかに。