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表紙とオビ
じっさいの表紙は白色で文字が白箔押し(凹) |
書 名 花森安治装釘集成
著 者 花森安治(1911ー1978)
編 者 唐澤平吉 南陀楼綾繁 林哲夫
写 真 河津一哉
協 力 暮しの手帖社
装 釘 林哲夫(レイアウト)
発行日 平成28年11月25日(奥付は3日、文化の日)
発 行 みずのわ出版
発行者 柳原一德(写真・校閲)
発行所 山口県周防大島町西安下庄 庄北2845
印 刷 山田写真製版所
製 本 渋谷文泉閣
判 型 B5判 並製 288ページ
定 価 8000円+税
10月25日は、花森安治の誕生日、ことしは生誕105年でした。
ふしめの日に、刊行できなかったのは残念ですが、それでも小生にとって長年の夢がかない、ほんとうにうれしくおもっています。ついに日の目を見ることになりました。
このむつかしい時世に、男気で出版をひきうけてくれた版元の柳原さんをはじめ、装本レイアウトに丹精をこらしてくれた林哲夫さん、正鵠を射た解説によって本書の格調をあげてくれた南陀楼綾繁さん、そのほかに暮しの手帖社ゆかりの河津一哉さん、平賀美乃里さん、いまはなき宮岸毅さん、横佩道彦さん、中川顯さん、そして島根大学図書館、世田谷美術館など、多くの方々の協力を得て、ようやくでき上がりました。こころから感謝しています。
本書に収載したタイトルは500点を超え カラー図版は約1,000点にのぼります。花森安治が手がけた、松江高校時代にはじまる戦前戦中戦後の装釘のしごとを、ほぼ網羅しています。装釘家であり、イラストレーターでもあった花森安治。この一冊で、その生涯にわたる活躍ぶりを、見わたしていただける内容になったと自負しています。これが実現できたのも、出版を許諾してくださった土井藍生さんのおかげです。ありがとうございました。お伺いすべきところですが、信州伊那谷から、あつくお礼申し上げます。
本書では、拙ブログ「花森安治の装釘世界」で公開をせずにとっておいた、希少の珍しい花森作品を数多くごらんいただくことができます。惜しむらくは古書のために、刊行当時の色調が褪せていたり変色したりしていることですが、それでも花森安治ならではの自由な画法、かき文字の力強さといったもの、なにより一作ごとに斬新であろうとした職人かたぎの創作姿勢が、どのページからもつぶさに伝わり、ひたむきな情熱を感じとっていただけるでしょう。とくにデザインを志す若い方々にごらんいただきたくおもいます。
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チラシ |
【ご購入方法】
本書は少部数の限定出版のため、一般書店でのご購入はちょっとむつかしく、みずのわ出版まで直接ご注文いただくのがもっとも確実です。
電話・ファクシミリ 0820−77−1739
メールアドレス mizunowa@osk2.3web.ne.jp
■注文部数・お名前・ご住所・電話番号をお知らせください。
■本が郵便振替用紙同梱で送られます(送料無料)。
■到着から10日以内を目処にご送金ください。恐れ入りますが、郵便局への御足労と、振替手数料はご負担願います(窓口よりも、ATMを使ったほうが手数料が安く上がります。ただし月3回まで)。
■銀行振込をご希望の場合、別途見積書、領収書等が必要な場合は、その旨お知らせください。
・代引サービスは取り扱っていません。あしからずご了承ください。
【制作の舞台裏から】
本書制作は、林さんに相談したのが発端です。みずのわ出版は、先に林さんの装本レイアウトで『佐野繁次郎装幀集成』を刊行し、広く好評を得ていました。おなじようなスタイルで、花森本も一冊にまとめられたらと願いました。それが六年前のことです。
ところが、ことは容易ではありませんでした。制作にかかわる四人の地理的特異性です。みずのわ出版は山口県周防大島、林さんは京都、南陀楼(河上)さんは東京、そして小生は信州伊那谷で暮しています。モノを持ち寄って、ちょっと打ちあわせ、というわけにはまいりません。
また、いざ始まると、持ち前の<欲>が出てきました。もっと良くしたいという、モノ作りの現場で生まれてくる際限のない欲です。できるかぎり多く書影をのせたい、その思いが強いあまり、追加蒐集に手間どり、そのうえ花森安治の特色が見てとれるレイアウトにしてほしいと註文をつけて、目次や本文文字組、奥付など、可能な限り見てとれるようにと、せっかくできていた林さんのレイアウトをやりなおしてもらうという、まことに失礼なわがままを通しました。刊行までにかくも長い歳月を要したその責は、ひとえに小生にありますが、その甲斐があったとよろこんでいます。
本書の制作をとおして、プロのしごとを再認識しました。それは『書影の森』の著者、臼田捷治さんも感心しておられましたが、装本レイアウトの林さんのセンスのよさと共に、ひとり出版社を主宰する柳原さんの責任感のつよさ、お二人のまじめで綿密なしごとぶりです。柳原さんは周防と信州、周防と松江、そして周防と京都をいくども往復し、泊まりこみで撮影、書誌データの蒐集、校正にあたってくれました。いかにコンピューター時代でも、やはり要所はひとの手しごとであること、良いしごとは手間ひまがかかること、そのことをお二人は妥協せずに見せてくれました。
南陀楼綾繁さんは、<縁>というキーワードによって、花森の装釘のしごとを解説してくれました。本書もまた、花森安治を敬愛する人々の縁が結ばれて、できあがりました。人の世の不思議をおもい、感慨無量です。出版界の将来に、小さいながらも一つ、希望の灯をともし、人々のこころに、天才アルチザンのいのちが吹きこまれることを、願ってやみません。
そしてここに感謝したいのが、山田写真製版所で印刷を担当してくれたみなさんです。元本に照らし、なんども色校正をだして、印刷に細心の注意と手間をかけてくださいました。編者冥利につきます。ありがとうございました。
書名の文字を白箔押ししただけの白亜の表紙には、花森への敬虔な思いが、花森の絵柄に似せた楽しげなオビには、親愛の情がこめられているようで、やさしい気持に包まれます。専門書に類するため、大部数刊行がためらわれ、そのため一冊単価は高くなってしまいましたが、手にとっていただき、扉を開いてごらんいただけば、花森安治の豊饒な装釘世界を、どなたもきっとご満喫いただけることでしょう。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
【追記】
きょう1月14日は花森安治の祥月命日。
花森がなくなった日の早朝、東京はこぬか雨でした。やがて冷たい風が吹きはじめ、町に冬の寒さがもどると、伊豆大島近海を震源とする、大きな地震が何度かありました。 そのとき暮しの手帖研究室では、なにごともなかったかのように、しごとをしている自分がいました。胸が疼きます。
このブログは、この追記をもって終了しますが、いまなお閲覧してくださる方がいますから、とうぶんは閉じずにおきます。願わくば、花森安治のためにも、なるべくコピペをしないでいただきたく存じます。
長い間、拙ブログにお立ち寄りいただき、ありがとうございました。